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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)1077号 判決 1960年3月18日

上告人 誠興業株式会社

被上告人 日本電信電話公社

代理人 大坪憲三 外三名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人泉田一の上告理由第一点について。

民法七一五条にいわゆる「事業ノ執行」は客観的に業務執行と同一な外形を有する行為であればこれを以て足り、使用者の利益を図る意思を以て為すものであることを要しない。しかして原審の確定した事実によれば、浜田正臣らの係争ケーブル切断撤去の行為は、たとえ、それが同人ら個人の小遺銭稼ぎのためその手段として為されたものであつたとしてもなお客観的に上告会社の前記請負事業遂行上必要な作業行為の外形を備えて居るものと認めるを相当とするから原審に所論違法はない。

同第二点について。

原審認定の事実関係の下に於ては、上告会社は本件事業の監督につき相当の注意を為していたものと認められず、また相当の注意をしても係争事故が避けられなかつたものとも認められないとした原審の判断は相当であつて、選任又は監督の何れかに過失ある以上使用者の責任は免れないところであるから論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 小谷勝重 藤田八郎 池田克 河村大助 奥野健一)

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